今回は以前、務めていた救命センターで働いていたときに患者さんから聞いた面白い話をしようかと思います。
こんばんは。元・救命看護師のmasayan(@masayan382)です。
題して、「三途の川を渡りかけた男」の話です。
「嘘臭い!信用できん!」という方は閉じてください。
「まぁ、話のタネに読んでやってもいいよ」という方は読み進めてください。
まずは、予備知識としてのこちら。
三途の川とは!?
三途川(さんずのかわ、さんずがわ)は、此岸(現世)と彼岸(あの世)を分ける境目にあるとされる川。
引用元:Wikipedia「三途の川」
ということです。つまり、三途の川を超えるとその先は「あの世」ということです。よく覚えておいてください。この後、この話の重要なところで登場します。
では、本題に参りましょう。
三途の川を渡りかけた男
心肺停止状態で搬送されてきた50代男性。
心臓マッサージと強心剤で心拍再開。呼吸管理のため経口挿管。人工呼吸器を使用。昇圧剤で血圧を何とか維持していました。
連日、娘さんが面会に来ていました。
数日後、容態も安定。昇圧剤なしでも血圧が保てるようになっていました。
そして、人工呼吸期を離脱。自発呼吸ができるようになりました。
いよいよ挿管チューブを抜こうと鎮静剤を減らしていたときのことです。
娘さんが面会中、鎮静剤を減らしても目を覚まさない父に向かい「お父さん!目を開けてよ」と泣きながら手を握る娘さん。
すると、うっすら目を覚ましたのです。看護師さん目を開けました!と涙ながらに伝えてきた娘さん。
「良かったですね」と一緒に喜びました。
そして、無事に抜管。徐々に動けるようになりご飯も食べれるようになりました。
転棟前夜
翌日、救命センターから一般床へ移るという前日の夜勤を、私が担当しました。
それにしても元気になられてよかったです。うちに搬送されてきたときは心臓止まってたんですよ。
そうらしいね。全然知らなかったよ。
どこからなら覚えてます?
そうだなぁ。職場で一息つこうと、立ち上がってタバコを探してたら急に胸が苦しくなって前のめりに倒れたんだよ。で、気がついたら川の前に立っててさ、向こう岸に死んだ妻がいるわけ。なぜか知らないけど川を渡ろうとしていてさ、膝くらいまで浸かるとこまで行ったら、なんとなく後ろの方から娘が呼ぶ声が聞こえたんだよ。そしたらさっきまで手を振った妻が私の後ろを指差してたんだよね。で、娘の声がする方を見ようと後ろ振り返ったら…目が覚めた感じ?
知らない部屋で娘が泣いてた。しゃべろうとしても口に変な管があってしゃべれもしないんだけどね。ははは。
噂の三途の川ってやつなんですかね。
どうなんだろうな。やっぱ三途の川なんかなぁ。でもあれ、どうみても荒川なんだよな。
あ、荒川?金八先生のオープニングの?
そうそうあんな感じ(笑)
これってこの体験本にしたら売れるかな。ははは。
でもさ、死んだ妻がさ、死んだときの歳のままだったんだよ。私なんかこんなに老けたのにさ。こんなことなら、もっと若く綺麗な妻のことガン見しておけば良かったなぁ…。なんてね。
随分とラフに臨死体験を語ってくれるおっちゃんでした。
救命センターで働いていて、臨死体験を語ってくれたのは彼が最初で最後でした。
私が新人の頃、耳鼻科の医師が教えてくれたこと
そんな出来事からさらに4年前、私がまだ1年目の看護師の新人の頃。
耳鼻科の先生から教わったことがあります。
人間の五感(視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚)で最後まで残るのは聴覚と言われている。もう相手が聞こえていないと思っていても反応できないだけで聞こえているはずと思いなさい。もうだめだと思っても伝えたいことは伝えたほうがよい。きっとその言葉は届いている。
by 耳鼻科の権威あるお医者様
おっちゃんの言う、「娘が呼ぶ声が聞こえた。」そう言われたとき、耳鼻科の先生のその言葉が蘇りました。
伝えたいことが伝えられた人と、伝えられなかった人では達成感や後悔など手にする感覚が違うと思います。
「諦めたらそこで試合終了。」
安西先生も言っています。諦めずに想いを伝える、それが奇跡を起こしたのかもしれません。
さぁ、この話がただの夢の話なのか、本当の臨死体験だったのか…。信じるか、信じないかはあなた次第です!
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