あなたは『救急車』を呼んだことありますか?
怪我や病気と無縁の方にとっては救急車を呼ぶ番号「119」さえ知らない方もいるかもしれませんね。
では、次へいきます。
あなたが仕事や学校から家に帰ったとしましょう。
玄関を開けたらお父さん・お母さんorご主人・奥さんorお子さんが倒れていました。発見したあなたは何をしますか?
呼びかけて反応をうかがいますかね?仮に反応があってもなくても倒れているくらいのイベントが起きていたのなら「119」に電話して救急車を呼ぶべきでしょう。
おそらくここまでは頭がまわるかもしれません。
では本題です。
救急車に同乗して受け入れてくれる病院へ向かいます。
救急車の車中で救急隊の方、到着した救急病院の医師・看護師に聞かれる事ってご存じですか?
まさか、家族なのに大切な方の必要な事が何も答えられないってことはないですよね?
とういうことで、今日は看護師らしくそういう大事なお話をします。
人によっても聞かれることはまちまちでしょうが必ず押さえて欲しいことがこちら。
『GUNBA(グンバ)』というものです。
『GUMBA(グンバ)』とは!?
救急隊が救急現場で傷病者に接触し、現病歴や既往歴などの問診をする際に、必要な情報を簡潔かつ正確に問診を行えるようまとめられたのが「SAMPLE history」と呼ばれる問診法です。
①Symptoms
②Allergies
③Medication
④Past medical history
⑤Last oral intake
⑥Event preceding the inciden
の頭文字でSAMPLE。
「SAMPLE history」の日本語版が「GUMBA」となります。
要は最低限必要とされる問診項目の頭文字を取ったものです。
ベースは「SAMPLE」です。
日本語版の方がわかりやすいのでこの記事では「GUMBA」で話を進めます。
「GUMBA(グンバ)」の各項目について
G:原因(受傷機転)
U:訴え
M:めし
B:病気(既往歴)
A:アレルギー
上記がその項目。その頭文字をとって「GUMBA(グンバ)」となります。
なぜG:原因(受傷機転)が必要なのか
これはどのように怪我や病気をしたのか背景をつかむことで病気や怪我の診断やその場で必要な処置や対応を検討するために必要です。
例えば「胸を押さえて苦しそうになって倒れました」と言われれば心臓系の病気かもしれないという推測が立ち、必要な観察・処置。その分野に対応できる病院を考慮したりなど迅速な対応をする上で欲しい情報でもあります。
なぜU:訴えが必要なのか
これは本人が言えるなら欲しい情報。一番つらいものが一番の怪我や疾患を特定しやすいものになります。また、頭部外傷になるとぶつけた反対側がダメージを受けやすくもなるため一つの情報としては欲しいです。
ただし、本人が話せない状況では得られない情報になります。話せなくなる前の状況はどうだったのかでもいいのです。
例えば「朝はいつも通りなんともなかった」とか「前日の寝る前にお腹が痛いと言っていた」でも良いです。
「一ヶ月前から頭痛を訴えていた」と「なんともなさそうだったのにお料理中に急に頭痛を訴えてその場に倒れた」では推測できる疾患が変わります。
なぜM:めしが必要なのか
これを聞いてくること自体必要なのか?と思われる方もいるかもしれません。気管挿管や緊急手術のときに胃に内容物があると嘔吐のリスクが出てくるので考慮したいところです。食事中であったり、食事直後ですべき医療行為、することを躊躇する処置も存在するからです。
また、逆に「1週間以上まともに食事を取っていなかった」というケースでは栄養失調、脱水、電解質異常も考慮することができます。
なぜB:病気(既往歴)が必要なのか
これはその人がどんな人なのか、合わせて考慮しなければならないものなのか考える上で特に欲しい情報です。
既往で持っている病気からこちらもできることできないこと、注意しなければならないことが立案できます。また、疾患によっては使用できない薬剤も存在します。
例えば今回は頭の病気が疑わしいとなった際に心房細動という心臓の病気を持っていれば「やはりそうだったか」と考慮することができ、考慮ができれば対策も立案できます。
また透析を行っている方であればシャントをつぶさないように配慮しなければなりません。
なぜA:アレルギーが必要なのか
状況にもよりますがカニアレルギーの人が料理の中に紛れていたカニを摂取してアナフィラキシーショックを起こして搬送されてきた例もありました。
入院した際には病院食を検討しますし、薬でアレルギーがあればその薬を使わないようしたりと配慮できます。
↑こういった具合に必要な情報源になります。
では次は私が救急で働いている際に実際にあったケースをお話します。
ケース1
【50代男性:意識消失で搬送されてきたケース】
えっと…。呼びかけても返事がなかったのでしばらく放っておいたのですがさすがに変だなぁと思ったので部屋を覗いたら倒れてて、呼びかけても反応がないので救急車を呼びました…。
最後に元気な姿を見たのはいつですか?
2日くらい前です。
2日間は姿も見ていないし、声も聞いていないのですか?
はい。主人は自室にこもるタイプなので…。
そうですか。ご主人は何かご病気はおもちなのでしょうか?
確か病院にはかかっていましたが何の病気かは知りません。薬やら注射やらなんでも自分でやっていたので…。
注射ってことは糖尿病のインスリンなどでしょうか?
わかりません…。
では最後にご飯をいつ食べたのかはわかりませんか?
わかりません。別々に食事をとっていますので…。
↑これは患者さんであるご主人が低血糖で倒れていたケースでした。何でも自己管理しているため家族が関与することなく、また家庭内でもご主人が孤立していたため発見が遅れたものでした。
ケース2
【30代女性:カラオケ中に倒れて搬送されてきたケース】
娘さん初めまして。看護師のmasayanです。今回の経緯を確認させてください。どのようなお母さんが倒れて救急車を呼ぶに至ったのでしょうか?
母とカラオケに行きました。私も母もカラオケが好きでよくカラオケにも行ってました。今日もいつものようにカラオケで歌っていたら急に母が倒れました。呼びかけても反応がなくてお店の人を呼んで救急車を呼んでもらいました。
わかりました。お母さんは何かご病気をお持ちでしたか?
確か高血圧で薬をいつもは飲んでいたのですが、最近はめんどくさがって飲んでなかったような気がします。
お食事はいつとられましたか?
3時間前くらいです。カラオケ中はジュースを飲んでいました。
アレルギーはお持ちですか?
花粉症でした。あと、以前抗生剤でアレルギーが出たようなことを言っていたような気がします。
わかりました。ありがとうございました。
↑これは高血圧なのにしばらく薬をちゃんと服用していたなかった事。そこでカラオケでおそらく血圧が上がった。そこで実はもともと持っていた脳動脈瘤が破裂したケースです。
しかしこちらのケースは娘さんがよくお母さんを知っていたため初期診療をする上で何かとスムーズに事がすすんだように記憶しています。
上記のケースが言いたいこと
それは、「大事な人の事を知っておきましょう」ということ。
みなさんもしもの時に備えて保険をかけているものってありませんか?
車や家、買ったばかりの家電やスマホなんかも。
なんかしら保険をかけている事が多いはずです。
そういったものの「もしも」の場合に備えているのに、「大事な人のもしもの時に備えることはしないのですか?」
お金をかける必要もありません。その人がどんな人なのか知っているだけでも十分です。
どんな病気を持っていてどういう注意点があるのか。
知っていてもいいじゃないですか?だって大事な人ですもん。
可能なら「GUMBA」に加えて押さえておきたい「もしも…」
あくまでも「GUMBA」は最低限なのでここでさらに一歩踏み込んだ事を。
①内服薬
コレを把握できているケースは本人が薬の管理ができず奥さんや家族が管理できている場合が多いですかね。
ですが、処方箋を出される際、薬剤師さんが説明する紙を渡してくれますし、「お薬手帳」もあるはずです。
把握はできなくても最新のお薬手帳を救急隊や医師・看護師に提示できれば十分です。
②大事な人が女性の場合の妊娠の可能性。
これは搬送された先の病院でレントゲンを基本的に撮ることになります。自分が話すことができればいいですが彼氏・旦那さんが医師と話をするときにこういったことを言えないケースが多いです。
こういうことも把握できているケースは稀ですが、把握できていて困ることはないはずです。
③大事な人の家族の連絡先
これは結婚されている方なら不要かもしれませんが、同棲中などの方は是非押さえておきたいところ。
手術やら造影検査が必要になったさい同意書が必要になるので同棲中や内縁の妻などでは承諾が得られないケースもあります。
やむを得ないなどの条件が付く場合もありますが基本的には親族の同意を必要とします。
まとめ
情報の共有化は必要なことです。大事な人の事、自分の事を「もしも」の時に備えて伝えておくことは非常に大切なことです。
それに備えて一度、「GUMBA」のことを考えていただけると緊急時多少は冷静に対応できるようになると思います。
救急車を呼ぶなんて不慣れな上、パニックになりやすいです。この記事がお役に立てれば幸いです。
救急車を呼ぶ前に一度冷静に「GUMBA」を聞かれたら答えられるように頭の中でシュミレーションしてみましょう。
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