最近暑くなってきいましたね。気温が上がってくるとTVでもよく耳にするのが「脱水症状」です。
救急車で何人搬送されただの、何人死亡しただの報道されることも近年多いです。
みなさんは「脱水状態」や「脱水症状」についてよくご存知ですか?
こんばんは。看護師のmasayan(@masayan382)です。
先日、我が家では妻とこのようなやり取りがありました。
今日、だいぶ暑くなてきたから脱水に注意しよ思ってOS-1飲んでてんやんか~
OS-1は塩分が多いやろ。あかんで。
え、脱水予防にOS-1ってTVでもやってたやん。あかんの?
あかんやろ。カロリー低めのスポーツドリンクにしとき。
そうなん?そんなん知らんかったし。(OS-1代)失敗した〜、損した~。
・・・。(損得の問題なのか?)
なんてやりとりが【正露丸】のやりとり以来にありました。
自分が看護師なので、周りのスタッフは看護師、薬剤師、栄養士、医者…。病識や知識を持ってる人と接するのが普通だったので医療従事者ではない妻の様子を見ていて、医療従事者じゃない人はきっとこうなんだろうなと思ったわけです。
なので、今回はTVでよく聞くけど詳しくは知らない脱水についてお話したいと思います。
ちなみに、ここでクイズです。
脱水症状が出ているときのアプローチとして何をしたらいいでしょうか?
- 塩キャンディーをなめる
- 水を飲む
- スポーツドリンクを飲む
- 経口補水液を飲む
この記事を読み終わったら、今よりわかるようになってくれてると非常に嬉しいです。
クイズの答え合わせはこの記事の最後で行います。是非、最後までご覧ください。
また、脱水症状は「熱中症」とも大きく関わってきます。是非、合わせてその知識と対策を持ち合わせていただけたらと思います。
では、参りましょう。
脱水と脱水の3タイプについて
脱水(だっすい)とは、水分や電解質などの体液量が不足した状態です。
ちなみに体液というのは身体の中にある液体のことです。
成人男性において、健常時の全体液(細胞内液+細胞外液)は体重の60%を占める。 内訳は、体重に対して細胞内液が40%、組織液が15%、血液(血漿のみ)・リンパ液が4.5%・体腔液などが0.5%である。
体重70Kgの男性の体液の内訳
全水分量42ℓ 細胞外液14ℓ 血漿(血管内)2.8ℓ 間質液11.2ℓ 細胞内液28ℓ 引用元:Wikipedia「体液」
上記はあくまでも例えとして記載してみました。
身体の半分以上を構成する水分、そしてその水分の中で役割を果たす電解質。どちらも微妙なバランスを保っているのです。
それらがバランスを崩すと、体調も崩れるということです。
目に見えた汗や出血であればわかりやすいですが、目で見えない水分の損失があります。それが不感蒸泄というもの。
無意識のうちに失っている水分量は体重50kgの人で1日に1000mlになるともいわれています。
さぁ、そしてここからだ大事なところです。
あまり知られていないかもしれませんが、脱水というのは3種類あるのです。
したがって、3種類それぞれに合ったアプローチを考えないとだめだということです。
全ての脱水にOS-1が適するわけではないのです。
そういうところまでCMで○ジョージさんが宣伝してたら今回のうちの妻のような人が減るのになと思う今日この頃。
では、次からは「脱水の3タイプ」についてお話します。
高張性脱水とは!?
水分が著しく喪失している状態です。水分摂取量の低下や発熱によって起こります。
自力での水分摂取が困難な子供や高齢者に多いです。
スポーツをして汗をかくのとは別で、先ほど説明した不感蒸泄もありますので気付かないうちの脱水というのはこういうケースもあります。
症状としては、のどや口が激しく渇き、尿の量は減少します。身体の表面は皮膚の温度が温かく、色は赤みがありますが正常に近い状態です。
水分の減少が進むと、発熱、意識障害、幻覚、体重減少がみられます。
低張性脱水とは!?
細胞外液に含まれるナトリウムが減少する脱水です。水分の喪失よりも、ナトリウムなどの電解質の方が著しく喪失している状態です。
ナトリウムの血中濃度を保とうと、血液の水分が細胞内液に移動した結果、血液量が少なくなり、循環不全を起こしやすくなります。
発熱や下痢、嘔吐などによる体液消失に対して水のみを補充することにより容易に陥ります。
症状としては口の渇きは起こらず、頭痛、低血圧、麻痺、頻脈、意識障害などがみられます。皮膚の色は青白く、体温は低めになります。
等張性脱水とは!?
水分とナトリウムが同程度に喪失している状態です。原因としては、出血、下痢、熱傷などにより細胞外液が急速に失われることで起こります。
また、長時間のスポーツなどで発汗が著しいときも起こりやすいです。特にこの状態で、水分のみの摂取をしてしまうと「低張性脱水」に移行しやすいです。
症状としては、口渇、食欲不振、嘔吐、めまい、倦怠感などが現れます。
ざっくり説明するとこんな感じです。微妙な違いがわかりました?
パソコンと言っても、Windowsもアップルもあるわけで、携帯電話と言っても、ガラケーやAndroid、iphoneもあるわけです。よくよく見ると違いがありますよね?
脱水もそういうことです。そして、当然ながら扱い方も変わってくるということなのです。
ちなみに、脱水が進行するとどうなるのか?
上記の3タイプの脱水ですが、共通しているのは身体の中の水分損失。そして、ナトリウムの損失も伴うかどうかです。
下は水分損失率に合わせて出てくる症状をわかりやすく表で示してくれているので拝借してみました。
水分損失率 症状 1% 大量の汗、喉の渇き 2% 強い乾き、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮、尿量減少、血液濃度上昇
3%を超えると、汗が出なくなる4% 全身脱力感、動きの鈍り、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労および嗜眠、感情鈍麻、吐き気、感情の不安定(精神不安定)、無関心 6% 手足のふるえ、ふらつき、熱性抑鬱症、混迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇 8% 幻覚・呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、疲労困憊、精神錯乱 10-12% 筋痙攣、ロンベルグ徴候(閉眼で平衡失調)、失神、舌の膨張、譫妄および興奮状態、不眠、循環不全、血液および血液減少、腎機能不全 15-17% 皮膚がしなびてくる、飲み込み困難(嚥下不能)、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化、舌がしびれる、眼瞼硬直 18% 皮膚のひび割れ、尿生成の停止 20% 生命の危機、死亡 出典:水分損失率と現れる脱水諸症状の関係、日本体育協会、スポーツと栄養、108ページ、表7
あまり、細かいところまで詳しくTVや健康番組では説明してくれないことも多いですが、脱水等で死亡するケースはこういうことです。
脱水で人は死にます。だから、「水分等を補給しよう」というアナウンスが流れるのです。
脱水へのアプローチはどうするのか?
脱水へのアプローチ。それは「失ったものを補充する」これです。
高張性脱水には水を、低張性脱水には塩分多めの水を、等張性脱水には水と塩を。そんな具合です。
そんなに簡単じゃないですけどね。理屈ではそうなります。
実際にはどうすればよいのか。
そこで手軽にできるのが「スポーツドリンク」と「経口補水液」になるのです。
OS-1 | ポカリスエット | アクエリアス | |
エネルギー | 10kcal | 25kcal | 19kcal |
Na | 115mg | 49mg | 40mg |
K | 78mg | 20mg | 8mg |
※100mlあたりの含有量です。
ようやくここで、冒頭の妻とのやりとりに話がたどり着きます。…長かった。
製品によって多少の違いこそありますが、OS-1とスポーツドリンクの違いは明白です。
やはり注目すべきはナトリウムの量です。高張性脱水のときにOS1を飲むことは高ナトリウム血症になってしまい逆効果ですね。
かといって、低張性脱水のときにスポーツドリンクを飲んでもOS1ほどナトリウムの充足はできないということにもなります。
高張性脱水なら水分やスポーツドリンク。
低張性脱水ならOS-1。
等張性脱水なら「スポーツドリンクと塩キャンディー」とか「OS-1と水」といったところでしょうか。
等張性脱水が一番難しいですが、塩と水分の両方を補充するのがよろしいかと。
そして、注意してほしいのが電解質ってのはナトリウムだけではないということ。
複雑化してくるためあえて、ナトリウム以外はここまでほぼ触れてきませんでしたが、他にも電解質にはカリウムやマグネシウム、リンやカルシウムなどがあります。
表に足してあるのは「K・カリウム」です。これは多すぎても少なすぎても不整脈が起きる非常に扱いが難しい電解質です。
もちろん、必要だから体内にはあるのですが。
問題なのが、腎臓に病をお持ちの方はカリウムが高めの人が多いのでうちの妻のように元気なときに「脱水予防だー」なんて言ってOS-1をガブ飲みすると高カリウム血症まっしぐらになってしまうリスクがあるので注意してほしいです。
また、カロリーも一緒に記載しました。
そうです。スポーツドリンクは糖分が多めなのです。スポーツドリンクなんでね。
スポーツをして糖分を消費してしまった人が糖分と水分を補充しやすいようにできてます。
もしも、これを糖尿病の人が「脱水予防だー」なんて言ってスポーツドリンクをガブ飲みすると高血糖まっしぐらになってしまうので注意してほしいです。
そして、ナトリウムです。わかりやすく言うと塩分なのですが、これも高血圧をお持ちの方が高張性脱水のときにOS-1を摂取されると高血圧が悪化することが懸念されます。
ちなみに、経口補水液はご自宅でも作れます。
クックパッドには経口補水液のレシピまであります。すごい時代ですね。
参考経口補水液のレシピ
さぁ、だいぶ理解も進んできましたか?
知らないことばかりでしたか?
ここからは実践形式で少し考えてもらえるといいかもしれません。
脱水を理解した。アプローチを学んだ。その次は何をしましょうか…。
「判断」や「鑑別」です。結局のところ、何性脱水かがわかればあとは何をすべきか検討がつきますもんね。
では、続きと参りましょう。
「脱水の判断」。これ、難しいですけど大事なところです。
脱水をどう判断するの?
自分で脱水に気がつけなかったら他人から指摘してもらえないとわからないですよね。
つまり、ご高齢の方や小さなお子様はこのケースです。周りの人間が「この人は脱水になってるかも」って察してあげなくてはなりません。
では、周りにそのような人がいない場合はどうするのか。それは自分で判断しなければなりません。
一人暮らしの学生さんや社会人は体調管理も仕事のうちということです。
では、どのように判断していくべきか。
それは、まずは「経過」が大事だと私は思います。
先に流れを挙げて見ます。
- 脱水症状が出ている?
- 脱水症状が出るまでの過程は?
- 自分で対応できそうか?
- 自分で対応した結果、改善は見られているのか?
こんなところでしょうか。
①脱水症状がでているか?
おそらく、他人に脱水を指摘されなければ、自分で「あれ?」って思った症状があるはずです。それ以外の症状もあるのか。
それは脱水でよく見られる症状なのか挙げてみましょう。
ここでは脱水メインでお話していますが、他の持病も合わせて症状が出ているケースもあるのであらゆる可能性を模索するのも大事なことです。
症状に関しては、先に挙げた部分や「水分損失率と現れる脱水諸症状の関係」を参照してください。
②脱水症状が出るまでの過程は?
これ大事です。ここで、どのパターンかを考えます。
一番簡単なのが「直前まで激しいスポーツをして大汗をかいているのか?炎天下の中、大汗を流していないのか?」です。汗を長時間流していれば等張性脱水が疑われます。
また、数日前から下痢や嘔吐を頻回にしていたり、もともと腎臓を悪くしていたりするようであれば低張性脱水を考慮しましょう。
水分と塩分の補給を考えてアプローチしましましょう。
上でも記載しましたが、等張性脱水の人が「水だけを摂取」していると低張性脱水へ移行するパターンもありますのでご注意を。
そして、スポーツ等をせず、汗を流していなくても長時間水分を摂取していなければ高張性脱水を考えます。水分補給を考えましょう。
最後に水分をとったのは何時頃か、どれくらい飲めているのか確認してください。
また、体内の水分が不足している状況であれば大事な水分を失わないように尿量も減ってきます。最後のトイレに行った時間も確認できると判断材料になるかと思います。
③自分で対応できそうか?
ここが難しいところです。「人に迷惑をかけたくない」と思ってしまう人や「頑張り屋さん」なんかは無理しがちです。
また、手元にスポーツドリンクやOS-1なんかないよ。買いに行くのも難しいって場合もあるでしょう。自作できない場合もあるでしょう。
そういうときはもう具合が悪ければ病院へ行きましょう。もう歩くこともできないくらいであれば、迷わず119番で救急車を呼びましょう。
無理しなくてもいいと思います。脱水が進行し、意識が朦朧とし始めれば自分で救急車を呼ぶこともできませんからね。
「呼べるうちに呼ぶ」というのも大切な判断です。
④自分で対応した結果、改善は見られているのか?
手元にスポーツドリンクやOS-1、塩気のあるものがあって摂取した。水分もとった。しばらく様子をみても改善しないのか。症状は改善しているのか、悪化しているのか。見極めが難しいかもしれませんが、もう無理かもと思ったのであればこちらも119番で救急車を呼びましょう。
お宅にご家族さんがおられるならまだしも、一人暮らしの方なんかは部屋で一人倒れてしまったら他人は余計に気が付かないですからね。無理は禁物だと思います。
こんな感じで脱水に対して向き合ってもらえたらと思います。
妻からの一言
ということで、脱水かどうかを見極める奥の手を伝授いたしましょう。
最悪、何性脱水かを判断できなくてもいいんです。病院に行ってお医者さんに判断してもらうでもいいんです。問題なのは脱水症状を起こしているのかどうかです。
ツルゴールの低下
ツルゴールとは、皮膚が引き締まった緊張状態のことです。つまり、皮膚がゆるむくらい皮膚だ弾力性を失っているくらい脱水状態か見極めます。
ただし、この評価が全てではありません。もともとの皮膚の状態や皮の状態でもツルゴールが低下気味の方もおられます。
【評価方法】
①若年層は手の甲や前腕の皮膚を、高齢者は鎖骨あたりの皮膚を軽くつまむ。
②皮膚をつまみ、元に戻る時間を見ます。皮膚の弾力性に低下がみられる場合や元に戻るのに2秒以上かかる場合は、「ツルゴールの低下」があるものとし、脱水の可能性を考慮します。
CRT(Capillary Refill Time(毛細血管再充満時間))
この検査法は爪床圧迫テストとも言われるものです。
【評価方法】
①爪床を5秒間ほど圧迫します。
②圧迫を解除して白くなった爪に再び赤み戻るまでの時間を測ります。これは爪の先まで循環がしっかりできているかを評価するものです。もしも2秒以上かかるようであれ循環不良が疑われます。ここでは脱水による循環不良を考慮します。
これは災害時のトリアージなどでも使われる評価法の一つです。
しかし、これには欠点もあります。まずは、冷え性の人はもともと指先が冷たく抹消の循環が悪いケースがあるので元気なときからCRTが2秒以上かかる人もおられます。また、女性の場合はマニキュアをしている場合もあります。
どや!
ん~、もっとないの?
では、奥の手を。
あるやん。それいってみよう!
それは、体重測定です。
そうきたか…。
だって、目にみえて、汗や出血や下痢、嘔吐してたら脱水ってわかるやん?でも室内で寝てるだけやのに元気がなかった場合。ちらっと体重測ってみ?例えば昨日より体重減ってるやんってなったら一発やろ。練習試合前より試合後体重が減ってたら脱水やん。
それは確かに…。
では、まずは妻の体重から測っておきますか
それはいらん
・・・。
まとめ
だいぶ長くなってしまいました。「脱水」って奥が深いと思いませんか?
実は病院に来ていただけるとすんごく簡単なんです。採血してデータを見るだけですぐわかるんで。そしたら点滴で補充するだけです。
ただ、病気をお持ちの方ですと日ごろ内服されているお薬の調整とかいろいろすることもあるかもしれませんが。
今回私が言いたかったのはうちの妻のように「脱水って塩取っておけばいいんでしょ?」とか「脱水予防ってTVのCMでタレントさんが言ってるOS-1なんでしょ?」て盲目的に思わないで!ってことでした。
「脱水が3種類ある」とか、「OS1とスポーツドリンクの違い」とか知らないと困ることもたくさんあるんです。
今回まとめたことが全てではなく、あくまでも「脱水」の入り口というか、うわっぺらだけです。ちゃんとやるともっと長くなるので今回はここまで。
興味が湧いた方は是非もっと勉強してみてください。わかってくると脱水も面白いもんですよ。
あと、是非備えとしてご自宅に保存しやすい粉状のスポーツドリンクや経口補水液なんかもあると重宝すると思います。もちろん、作成方法は説明書きのとおりに作ってもらえるとよろしいかと。
あと、救急車を呼ぶときはGUNBAのことも考慮しておくと、なお、よろしいかと思います。
では、冒頭でのクイズに戻りますか。
脱水症状が出ているときのアプローチとして何をしたらいいでしょうか?
- 塩キャンディーをなめる。
- 水を飲む。
- スポーツドリンクを飲む。
- 経口補水液を飲む。
どうですか?もう今ならわかりますか?
正解は・・・。
4つの選択肢ではなく、「何性脱水なのかを見極める」でした!
ひっかけ以下の愚門でしたね。あえて、以下の4つのうち正しいものを選べとも言ってないところが私の腹黒さを表しています。
何性脱水かを見極めてから何を摂取させるのか考えましょう。
何も考えず、先入観で動く盲目的アプローチは今日で卒業です。
元気なのか、具合が悪いのか。それは元気な時との比較が大事です。
日ごろから体重を測っていれば激減しているのか一目瞭然ですね。
あなたの大事なご両親やお子さん、奥さんに旦那さん、もとよりあなた自身の体重ってご存知ですか?
普段、1日でどれくらいお水って飲んでるんですか?
普段、1日で何回くらいトイレに行ってるかご存じですか?
具合が悪いときって、それらが崩れているんですよ。これ以上にわかりやすい指標はありません。
日ごろからの観察とケアは予防という名の最高の医療だと私は思います。
この記事が読んでくださった方のお役に立てていれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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